青色は正義。

青か、青以外か。

羽越本線が好きだ。

羽越本線が好きだ。

村上から鶴岡あたりの笹川流れの景色もいいし、酒田から北の日本海の景色もいい。電化されているのに酒田から南の普通列車ディーゼルカーばかりで、つい最近まで国鉄時代の古い車両がのんびりと走っていた。4人がけのボックスシートの車両が、海沿いの線路をゆっくりと走っていくのは、今考えると、昔全国各地で走っていた客車列車の最後の名残だったのかもしれない。何度も通っていたはずなのに、ずっと「いなほ」や「きらきらうえつ」に乗って通り過ぎてしまってばかりいたこの区間を、古いディーゼルカー普通列車でようやく乗れたのは、彼らが引退する半年前のことだった。

酒田から北、秋田まではそんな客車列車を置き換えた、ステンレスの2両の電車が走っている。都会の通勤電車と同じようなロングシートの車両で、鉄道ファンからはすこぶる評判が悪い。

でももしその車内に誰も乗っていなかったら――海に向かった窓はいちめんに日本海の大パノラマを映す。ボックスシートの一区画ごとに区切られた窓では決して見られない光景である。車内の誰も乗っていないことなんてほとんどないのだが、そういう瞬間に立ち会えるなら、ロングシートの車両も悪くない。

この写真を撮ったのは女鹿と小砂川の間だと思う。

太陽光の通り道となってキラキラする日本海を高いところから見下ろす。午前中に見たあのブルーのインクのような海ではない。黒い瓦で統一された集落の向こうで山が開けるたびに白い海がその表面を細かく揺らせて光を反射させる。(2019年9月16日)

日本海はいつも薄曇りの下にあったり、晴れていてもなんとなく寒い色をしている印象がある。でも、しっかり晴れた秋の日にはこんな明るい表情を見せてくれる。そんな景色が車両の窓いっぱいに映る。そんな羽越本線が好きだ。